忙しいときのandroidさんの怪しい挙動にドキドキする。 2011年01月08日 けいおん! トラックバック:0コメント:2



文字入力と送信ボタンがくっついてるのって危ないと思います。



カラー練習







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2010年08月28日 けいおん! トラックバック:0コメント:0

1494yg.jpg





(BGMなし)

カット1:(桜ヶ丘高校外観)
カット2:(誰もいない部室)
カット3:(部室入口を天井隅から見下ろす構図)

(誰かが走っている足音)

(カットが変わり、低い目線で廊下を映す)
(誰かの脚がフレームに入り、すぐに出ていく)

(田井中律が廊下を走っている)

(部室入口を見下ろす構図に戻る)
(田井中律が部室入口をそーっと開ける)

田井中律:「あは、悪い悪い。ちょーっと用事が長引いちゃって……」

(って、あれ?
 っていう表情になり、部室を見回す律)

田井中律:「誰も、いない」

(オープニングへ)

●●●●●●

オープニング

●●●●●●

(オープニング終わる)

(笑顔の平沢唯のアップを正面のカメラで映す)

平沢唯:「ごめんねみんな。変なことに巻き込んじゃって」

(カメラが並んで歩いている4人の側面に切り替わる)
(平沢唯の隣の琴吹紬が両手を胸の前でぎゅーっと握って唯に顔を向ける)

琴吹紬:「そんなことないよ唯ちゃん。私、すっごく楽しかった!」
秋山澪:「あれを楽しいと言うのかムギ……」

(紙芝居のような回想シーンの挿入)
(生徒会の活動記録小冊子の作成手伝い)
(真鍋和を中心に十数人の生徒がこつこつと製本作業をしている)
(唯、ムギ、澪、梓が黙々とページを順番に重ねている)

平沢唯:「でも、和ちゃん喜んでたよ」
中野梓:「そうですね……」
平沢唯:「やっぱり、誰かのために頑張るってのは、尊いことなんだよ! ね、あずにゃん!」
中野梓:「まあ、そうですけど……」

(音楽準備室の階段を上がる4人)

秋山澪:「律のやつ、一人でケーキ食べてたりして」

(澪が部室のドアを開けると、そこにはギー太を弾こうとしている律の姿があった)

平沢唯・中野梓:「おお」

(平沢唯と中野梓が並んで驚いた顔)

琴吹紬:「律っちゃん似合うー」

(琴吹紬が目をきらきらさせる)

秋山澪:「ていうか、律、ギターはあきらめたんじゃなかったのか?」

(カメラは部室を俯瞰)
(秋山澪が律に近づく)

田井中律:「あきらめたけど、でも、なんだか、私」

(カメラが田井中律の全身を映す)

田井中律:「今ならギターが弾けるような気がする!」

(タイトルへ)

●●●●●●

『上書き!』

●●●●●●

(タイトル終わる)

――――以下、小説文体に切り替わる――――

「ちょっと前にふわふわ時間教えてもらったけどさ、もう一度教えてよ! 梓!」

軽音部部室にいつもの律っちゃんの声が響き渡る。

律っちゃんはピックを持ったまま、あずにゃんを指差す。
あずにゃんはちょっとビクッとして、でもすぐに笑顔を取り戻して、言う。

「……いいですけど、律先輩、またすぐに投げ出さないでくださいね?」
「投げ出さないように教えるのが先生の役割なんじゃないのかー?」
「う。嫌な生徒ですね……」

そんなことを言いながらも、あずにゃんはどこか楽しそうだ。
鞄をソファーに並べ、むったんをケースから取り出す。
澪ちゃんとムギちゃんは一足先にいつもの席へ座る。
私もちょっと遅れて席に座る。
そして律っちゃんと律っちゃんに抱えられているギー太を見眺める。

なんか、新鮮な感じ。

ギー太が私以外の誰かに抱きしめられて、音を鳴らす。
音はいつもギー太の音なんだけれど、聞こえ方が違うような感じ。
――こんなこと、前もあったっけ。
そういえば、さわちゃんが弾いたときもあった。
そのときはもう、『さわちゃんの音』としか言えないような音が鳴った記憶がある。
憂も弾いたことがある。
最近はあんまり触らないけれど、ギー太を買ったばかりのころは、憂も面白がって弾いてた。
そのときもまた、憂の音が鳴った。
う~い~って感じの音。まあ、言葉にうまくできないけれど。
そして今、律っちゃんが弾いている。
もう、これもまた、律っちゃんって感じの音だ。
一見、大雑把で投げやりだけど、でも、なんだか暖かくてやさしい音。
ムギちゃん並にはぽわぽわじゃないけど、律っちゃんも結構ぽわぽわだ。

「唯、いいのか? ギー太とられちゃって」

澪ちゃんが問題集をめくりながら言う。
……とられちゃって?
とられちゃって、っていう感じは私の中には無いなあ。
むしろ、ギー太はなんだか生き生きとしている。
だから、私は言う。

「いいんだよ。全然いいよ。逆に、ギー太も喜んでるよ」
「そうか? ……まあ、唯がそう思うなら、いいけど」

澪ちゃんはちらりと律っちゃんの様子を伺って、でもすぐにまた問題集に目を落とす。
ムギちゃんもまた、ノートを広げている。
ムギちゃんのノートはすごい。
普通に本屋さんで売ってる参考書よりもわかりやすく書いてある気がする。
なんとなく、授業の要点というのをしっかりと押さえてある感じがする。
憂のノートもそうだった。
先生の言っていること・黒板に書いてあること、それ以上のことを憂は書こうとしているんだろう。
だから、憂は、ムギちゃんは、ちゃんと学ぶことができる。
本当の意味での学習というものが出来ている。
私にはできない。なんでかな。でも、だから、思う。

「ムギちゃんはすごいよ」

あ。間違えた。思わず口に出してしまった。
ムギちゃんは、ええ?、って顔で私を見て、そして、困ったように首を傾げる。

「え? 唯ちゃん、私、なんかした?」
「いやいやいやあ」

私は手をぱたぱたさせてムギちゃんの真っ直ぐな視線から逃げようとする。

「まあ、その。ムギちゃんのノート見たら、こう、きれいでまとまってるから、すごいなーって」
「あ。そうそう。ムギのノートってすごくわかりやすいってみんな言ってた」

澪ちゃんがムギちゃんのノートをのぞき込んで言う。
ムギちゃんが一気に赤面する。
そして、ぺらぺらぺらと何度もノートをめくってごまかそうとする。

「そんな……そんなことないの! 私、自分のノート見直して、たまに全然わからないことあるし!」
「そんなのしょっちゅうだよ。私、自分のノートがなんの教科なのかもわからなくなることあるし」

と、私は断片的な情報しか書いてない暗号文のような自分のノートを思い返しながら言う。

「そうそう。そうなの! 私のノートもたまに授業と連動してないときがあるの!」
「ムギの場合は、授業よりも先に行ってるからじゃないのか?」
「澪ちゃんはそんなことない? 授業中、時間があるとどんどん後のページまで見ちゃわない?」
「昔は、結構見てたけど、最近はそんな余裕ないなあ」

……ああ。
違う。
話のレベルが違う。
私はそう思う。ムギちゃんも澪ちゃんもすごい。
やる気が違う。勉強に対する熱意が違う。
でも、じゃあ、なんで私はそうなれないんだろう?
私は勉強する気があんまり起きないんだろう?

憂も勉強が好きだ。
小学生の頃から、憂はいつも勉強が出来ていた。
憂の部屋に行くと、だいたい勉強している。
勉強しているように見えて漫画を読んでいることもあるけれど、だいたいは勉強をしている。
憂は勉強が好きだねえ、と憂に昔、言ったことがある。
そしたら憂は、別に好きとかじゃないかも、と私に言った。
勉強はしなくちゃいけないことだし、あと、将来、大事になるんじゃないかな、と続けて言った。

そうかな?
どうかな?

と、私は思ったけれど、でも、まあ確かに勉強は出来た方がいいんだろう。
少なくとも、テスト直前であわてて勉強するというつらさはないわけだし。
私みたいに、大学受験を目前にして、その大きな壁、プレッシャーの強さに気づいて、
あわてふためいて、まあ、でもどうにかなるよねと思っているより全然いい。

……大学受験か。

どうにか、なるかな?

どうにかなるよね?
……ならないかも。
ならないことは、過去、多々あった。
それでも、私は学習しない。
学校の勉強じゃなくて、もっと本質的な意味での学習を、私はしない。
律っちゃんみたいに学習しない。
そうそう。
いきなり律っちゃんを引き合いに出して申し訳ないけれど、
律っちゃんも学習をしないし、どんどん色々忘れていく。

講堂使用届けを出し忘れる律っちゃん。
深夜活動届けを出し忘れる律っちゃん。
部長会議に出忘れる律っちゃん。
宿題を忘れてきて朝、澪ちゃんの書いたのを丸写しする律っちゃん。
弟の弁当を持ってきてしまう律っちゃん。

そして、それを何度も繰り返す律っちゃん。
学習しない。

そういえば、忘れていることを忘れてるっていうこともあったかも。
私はなんだか思い出しているだけで面白くなってきて、くすくすと笑ってしまう。
こんなこと律っちゃんに言ったら、
『……ゆ、唯にはそんなこと言われたくないし!』
とか怒りそうだなと思って、もっと自分の中で面白くなってしまう。

「ふふふ。なに? 唯ちゃん、思い出し笑い?」

ムギちゃんがつられてちょっと笑いながら聞く。
私は照れる。照れながら、律っちゃんに目をやる。
律っちゃんはアンプを繋いで練習し始めた。結構、真面目にやってるみたいだ。

「いやあ、律っちゃんって、色々忘れることあるよね?
 なんとか申請書、とか、書類とか、宿題とか。私、勿論、人のこと言えないけど、
 なんか突然思い出して面白くなっちゃって」
「昔からそうなんだ。律は」
「そうなの?」
「いっつも私がフォローしてた」
「今だってさ、ついこの前、ギターはやっぱり無理とか言ってて、今はもう忘れてるよ」
「そういうパターンもあるよ。律パターン」

澪ちゃんは呆れたような声で、でも、笑いながら言った。
澪ちゃんは律っちゃんの話になると、いつも、こんな感じで笑う。
怒りながらも、でも、本当は怒ってない感じで。
二人の関係は本当にいい感じだ。
何をしてても二人はいつもいい感じ。
なんだかんだで律っちゃんは澪ちゃんを一番の頼りにしている。
そして、澪ちゃんもまた、律っちゃんに一番最初に相談する。
二人は認めないかもしれないけど、どう見ても二人は二人でひとつだ。

「でも、律っちゃん、今、頑張ってる」

ムギちゃんが後ろを振り向いて、言う。
すかさず、澪ちゃんが言う。

「でも、本当は受験勉強を頑張るべきなんじゃないかな、と思うけどな」

E⇒A⇒B
E⇒A⇒B

君を見てると いつもハート どきどき

――あずにゃんがリズムをしっかりとキープする。
律っちゃんはその上をふわふわとついていく。

あずにゃんはしっかりしてる。
あずにゃんは誰よりもしっかりしてる。

演奏はもちろん、性格も。人間としても。

私なんかより、数十倍もしっかりしてる。

高校最後の学園祭が終わったとき、一番、そう思った。
終わったあと、私はもうだめだった。
泣いた。泣くなんて、正直思ってなかった。
ライブはなんだかんだで大成功だった。みんな喜んで、楽しんでくれた。
私達も楽しかった。練習どおり、いや、それ以上に上手く演奏できた。

あの空気の感じは一生忘れない。

目に突き刺さるようなまぶしい照明、みんなの顔、音像。
私のピックが振るわせた弦の音と、私の背後のアンプから私の全身を貫く轟音。
澪ちゃんの気持ちのいい低音。あずにゃんの鋭角なカッティング。
律っちゃんのばしばしと響くリズム。ムギちゃんのうねる電子音。
そして、それが絡み合って出来たひとつの気持ちのいい空間の歪み。
時間、位置、感情、過去、今、未来、全てが講堂の中で溶け出して、
私達と聴いてくれたみんなみんなが全てひとつになって、
そして私は力強く歌えた。
歌うことができた。

終わったあと、みんなは私のことを『すごい』って言ってくれたけど、
私は全然そんな気がしなかった。私なんか全然すごくなかった。
すごいのは、むしろ、みんなの方だった。
私が気にしてたのは、背中がずっとふわふわしていたっていう感触だけだった。
ふわふわ。ふわふわ。ライブが終わって、私達は機材を片付けた。
ふわふわしながら片付けた。台車を転がした。ジャズ研にアンプとスピーカーを返した。
そして、私達は言葉少なく、部室に帰ってきた。

部室はオレンジ色だった。

その色は、別に物珍しい色じゃなかった。
いつもの色だった。
だけど、それだからこそ、私はその色に惹かれた。
吸い込まれるように、私はそのオレンジ色の下に腰を下ろした。

ムギちゃんが右隣に座って、律っちゃんが左隣に座った。
私はまだふわふわしていた。ギー太を腕に抱えていた。
夢みたい、っていうわけじゃなかった。私はちゃんと歩いてここまできた。
その実感はあった。
365日。
3年間。
みんなでいつも歩いてきた。
振り返ればあっという間な日々だったけど、でも、毎日毎日が大切な一日だった。

たったの一日も欠けちゃいけなかった。
たったの一日も代替不可能な大事な一日だった。

そして、いつもみんなで音を重ねてきた。
ムギちゃんが作ってきた音楽を、みんなで自分なりに鳴らして、溶け合わせてきた。
コーヒーにクリームを混ぜるみたいに、私達の音楽は毎日少しずつ確実に滑らかになった。
豊かになった。面白くなった。きらきらしていった。

そんな瞬間が大好きだった。
そして、そんな瞬間はいつもこのオレンジ色の中だった。
私達はこのオレンジ色の中でずっと笑いあってきた。

で、そのいつものオレンジ色の中で、みんなで肩を並べた。

そのときの話のきっかけがどんなものだったか、私は覚えてない。
ただ、これから、何をする? っていう話になって、クリスマス、初詣、バレンタイン、
そして、新歓ライブ、夏の合宿、そして学園祭、みたいな話になった。

でも。

――ないない。もう、高校でやる学園祭はもうないの。

そんなことを言ったのは、律っちゃんだった。
その言葉で、もう、私は完全に泣いてしまった。
本当は、その前から、ちょっと泣き始めてたけど。
でも、律っちゃんのそういうセリフが私を心の堰を外してしまった。

もう、ないない。
もう、ないの。

わかってた。
わかってたよ。
わかってないはずがないじゃん。
もう、この瞬間は二度と無い。
本当に、嘘でも誇張でもなんでもなくて、
この瞬間は二度と一生、死んでも何してもやってこない。
もう、このオレンジ色の部室の中で、みんなで重ねる音楽はない。

もう、無いんだ。

4月の始業式はもう、無いんだ。
桜の舞う4月、ギターを抱えて走るなんてことはもう無いんだ。
修学旅行だってもう無いんだ。
梅雨ももう無い。
合宿だって、夏休みだって、夏季講習も無い。海もプールも無い。
秋もない。期末テストも無い。
そして、学園祭も無い。

無い、というより、もう、終わったんだ。
みんなといる高校生活が終わったんだ。

嫌だ嫌だ、とムギちゃんは泣いた。
嫌だけど、でも、嫌とか好きとか、そういう問題じゃないことは、勿論、ムギちゃんもわかってる。
時間は流れる。
残酷だけど、全てが変わっていく。
全てが流れていく。
だから、ずっとここにいることはできない。
オレンジ色の世界はもう終わったんだ。

でも、終わったけど、それを私は素直に受け止められるだろうか?
過去を過去として終わらせることができるだろうか?

泣いて、泣いて、泣き疲れて寝た。

起きたときには部室は青色に沈んでいた。

●●

私は、あの瞬間をいつまでも思い出すんだろうか?
大人になっても、おばあちゃんになっても、あの瞬間を思い出して笑ったり泣いたりするんだろうか?

思い出に浸って、溺れてしまうんだろうか?
溺れて『今』が見えなくなってしまうんだろうか?

いつしか私も大人になって、この今の瞬間も『昔懐かしの思い出』に変わっていくんだろうか?
そのときの私はいかにも私らしい私の延長を生きていて、たぶん、そのときも
律っちゃん澪ちゃんムギちゃんあずにゃんは側にいるんだろう。
でも、もうみんなも大人になって、それぞれの生活があって、
桜ヶ丘高校は記憶の隅に追いやられていく。
あのころの私は輝いてたなーとか、あのころよりも今の私は輝いてるよーとか、
どっちにしても、もうあのころの私はあのころの私なんだろう。
今、こうやって色々と考えて、あのころの私になろうとしている今の私をこね回しても、
時間の針は回り続けて決して止まることは無い。

今の私を未来の私が思い出す。
そのとき、未来の私が今の私の忘れられなくて、なんだか泣けてしまって、
その瞬間、ちょっと『今』から逃げ出すなんてことが、無いとはいえない。
そういうのは、いいことなんだろうか?
悪いことなんだろうか?
悲しいんだろうか?
寂しいんだろうか?
大切なことなんだろうか?

わからない。

その日の夜。
家でみんなにちやほやされても、私はなんだか上の空だった。
憂に涙の跡を見つけられて、私はすっごく恥ずかしかった。
でも、憂もなんだか涙声だった。

私は夜中、澪ちゃんにメールをしてみた。
澪ちゃんはどう思っているんだろうか。

澪ちゃんは強い。
帰り道、澪ちゃんが一番早く立ち直っているように見えた。
律っちゃんが意外にも一番立ち直りが遅かった。
いや、それは特に意外でもないのかもしれなかった。

澪ちゃんからのメール返信は早かった。

――唯の気持ちはわかる。
――でも、私、思い出話ばかりする大人にはなりたくないなって思うよ。

おお。
直球だ。
澪ちゃんはやっぱり強い。

●●

「唯先輩!」

あずにゃんの声で私は起こされる。
顔を上げると、あずにゃんが心配そうな顔で私を見ている。
その隣でムギちゃんがケーキを持って笑っている。
私の頬を律っちゃんが突っつく。

「ほれほれ。ケーキタイムだぞ」

甘くて香ばしいチョコ色のケーキ。
そしてさらりとした味わいの紅茶。

「ケーキ!!」

私はそう言って身体を起こし、椅子にしっかりと腰掛ける。

「もう、唯先輩、ケーキじゃないと起きないんですね!」
「そんなことないよーあずにゃん」
「私が何度名前を呼んでも起きなかったじゃないですか!」

ぷくーっと頬を膨らませるあずにゃんがかわいい。

「夫婦喧嘩はもういいから、食べるわよ!」

ぴしゃりとさわちゃんが言う。

「今、『食べるわよ!』 っていうところにめちゃくちゃ力が入ってたな……」
「うるさいわね」

さわちゃんの手が律っちゃんのほっぺたに伸びていくが、律っちゃんは私を盾にして逃げる。
あずにゃんがいつもの席に戻ってフォークを持つ。

「では、いただきましょう~!」

ムギちゃんが優雅に言い、放課後のティータイムが始まる。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

――私はここまで書いて保存する。

文章はここで突然、横道に逸れることになる。

ここから下ではまた、上記文章と同じく一人称的な文体が継続されるが、
上記までと同じ『平沢唯』の文章ではない。

ここからは『私』を一人称とした文章である。
(というか、今までは『私』が『けいおん! 小説』を書いていたという構図)

しかしながら、けいおん! についての文章である事に違いは無い。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

『A』は『A』を含む構造の『B』に上書きされる。

n日続けられたブログは、n日分の情報・経験を含んで新たに記述されたn+1日目の更新によって上書きされる。

nコマ目まで描かれた漫画は、nコマ目までの情報・経験を含んで新たに記述されたn+1コマ目の漫画によって上書きされる。

昨日までの思い出は、今日の『さらに刺激的で新鮮な刺激』によって上書きされる。

脳の神経細胞は電気的な刺激によって活動する。
電気的な刺激、すなわち電気的な信号は時間経過で減衰する。
新たに外界から受けた刺激によって得られた信号が、昔の信号を飲み込んでねじ伏せていく。

結局、何が言いたいかというと、話は単純で、
私たちの世界は常に上書きされていく。

どんなに優れていた『昔の信号』も今は減衰して、使い物にならない。
昔の甘美な思い出に永遠に浸っていたくても、いつしかその思い出自体が上書きされ、色褪せ、消失していく。

物語もまた、そのような構造の下で語られる。
物語は、その物語を含む、上位に位置する物語によって上書きされていく。

物語要素{1、2、3、4}を含む物語1、すなわち、
物語1={1、2、3、4}
は、
物語2={1、2、3、4、5}
に登場によって上書きされる。
物語1との干渉を避けて創作された物語3={6、7、8、9}
は、
物語4={1~9}
の登場によって、物語1~3までの範囲で全て上書きされる。

別の例として、1つのニュース系ブログを想定する。
そのブログ1は、ニュースのネタを3つのサイトから得ている。
ブログ1={1、2、3}
ここで、新たにブログ2が登場し、そのブログ2は4つのサイトからネタを得ている。
ブログ2={1、2、3、4}
これによって、ブログ1はブログ2に含まれ、独立して存在する価値を失う。
(ブログ1はブログ2に上書きされる)

ある検索サイト1は1億ページ分のデータをインデックス化している。
ある検索サイト2は1兆ページ分のデータをインデックス化している。
検索サイト1は検索サイト2の存在により、存在する価値を失う。

誰かの作った『集大成』は、それが市場に出た瞬間に、
その『集大成』を含んだ新しい創作によって上書きされる。


こういう構造を別の方向からとらえて、下記のように、昔の人は例えた。

巨人の肩に乗る。

上書きに上書きを重ねた情報n(巨人)の肩の上に立ち、
私たちの微少な身長分の1をプラスして、私たちもまた巨人化する。

意識的に、無意識的に、私たちの生活は巨人の肩の上で営まれている。
言語を使い、数学を使い、物理学を使い、パソコンを使い、ペンタブレットを使い、電気的な情報を創作している。

あるいは、私たちは私たちの死骸の上に立脚している。

昨日までの自分は睡眠を挟んで死んでいる。
朝、再起動した自分は昨日の死んだ自分のデータを読み込んで自分を構築する。
朝、情報nを受け取り、少なからずの刺激を受け、情報n+1となってまた死ぬ。

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

「だから、つまり、こういうことなんです」

るきにゃんは、人差し指をピッピッとワイパーのように左右に振って、言った。

「あなたは今までのあなたを含んだ新しいあなたで上書きされるのです」

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

●描かれなかった物語●

けいおん!! は平沢唯を中心として描かれた高校3年間の時間の流れがテーマとなっている。

けいおん!! には色々な見え方がある。
音楽、部活、友情、学校生活、成長、変わらないもの、ビジネス的なこと、絵的なこと、制作者のこと、声優のこと、等々。
そのひとつひとつがけいおん!! の要素であり、その内のどこから語ってもけいおん!! を語ったことになりうる。
この要素で語るのはいいけれど、その要素で語ってはならないということはない。
けいおん!!本体ではなく、けいおん!!の2次創作を軸に語ってもまた問題はない。

私はけいおん!! について、『時間の流れ』を感じていた。
けいおん!! はアニメとしては第2期であり、第1期はけいおん! という名前になっていた。
けいおん! は高校1年の入学から高校2年の冬までを描いていた。
けいおん!! では高校3年の始業式から始まり、おそらくは卒業までが描かれる。
実物語時間としては3年間(26280時間)。
実質的に放送されたのは42週分×30分であることから、21時間分に過ぎない。
情報量としては実物語時間の約1251分の1に満たないその荒い時間解像度の描写の中で、キャラクタ達が動いている。

上記の文章は奇妙な印象をあなたに与えるかもしれない。

その理由として、そもそも、物語とはそのような解像度でできているのでは? というものがある。
物語構造において、1秒1秒を省略なしに描くものは少ない。
3年間の物語を、3年間の時間を使って描いたものは無い。
その理由としては、無駄に冗長になるであろうこと、非常にコストが掛かること、そして、描く必要がないということがあげられる。

人間は長い間、言葉による物語を学習・経験し続けてきた。
その結果、荒い解像度を自己補完して滑らかにする技能を獲得した。

平沢唯の状態Aから状態Bへの変化の理由・理屈は、詳細に描かれなくても、勝手に想像して補完する。
新曲をまともに練習している描写がなくても、作曲・編曲の過程が描かれなくても、勝手に想像して補完する。
(その過程が本当は物語的に存在しないであろうことがわかっていても、無意識的に補完する)

その補完量は、解像度が荒ければ荒いほど多くなる。
その物語を好きになればなるほど、脳内解像度は上がっていき、情報不足でぼやけて見えない箇所の細部を勝手に作り出す。

結果として、けいおん!! の3年間の見えない箇所、放送された時間の1250倍の不可視箇所は脳内で自動的に補完される。
そして、そういう蓄積、脳内の時間の流れが、8月に放送された20話によって、大きな節目を迎えることになった。

●青春ドラマ、あるいは日常的な物語という言葉の意味●

けいおん! の物語構造は始まった直後から既に明文化されていた。
監督の山田尚子さんによって、「青春ドラマである」と発表されていた。
あるいは、公式の場で「日常的な物語である」と何度も語られていた。

その言葉の意味を私達は時々忘れることがあった。
あるいは、取り間違えることがあった。

それはすなわち、青春的な生活が青春ドラマではない、ということであり、
日常的な描写が日常的な物語ではない、ということである。

物語のフレームとして「青春ドラマ」が採用されているということは、
「始まりと終わり」あるいは「出会いと別れ」が描かれるということに他ならない。
それを描くことがむしろ最も重視される。
全てがその最後の瞬間に収斂していくこと、そのことに最も細心の注意が払われる。

同様に、日常的な描写は日常的な物語とは異なる。
描写と物語は異なる。
物語は描写の連続によって紡がれるが、それゆえに描写は物語の下位階層に属していることがわかる。
描写は1コマ1コマの絵に過ぎないが、それが物語になれば流れになる。
日常的な絵と、日常的な流れは異なる。
流れには方向性と速度が構成要素として定義される。
初期値と構成要素から着地地点が予想される。

平沢唯が軽音部に入った。
田井中律、秋山澪、琴吹紬と出会い、ギターを手にした。

グラフ用紙を用意し、上記の座標に点を打ち、矢印を伸ばす。
時間軸は初期値から同心円状に等間隔で作図する。
二次元で足りない人は三次元に拡張してもいい。
三次元で足りない人は各々の必要なn次元に拡張しても問題はない。
どのみち問題はその時間軸の終焉にある。

高校卒業という意味をもつ時間要素によって世界は閉じられる。
そこから先は『軽音部』という物語が終わった領域になる。

グラフ用紙の矢印はそこで終わる。
その矢印が、けいおん! という物語であり、流れであり、意味になる。

そして、そのグラフ用紙こそが『日常的』という意味に他ならない。

平沢唯たちの涙はその矢印の意味のせいだとも言える。
もちろん、それを恨むでも悲しむでもない。
そのような構造と、そこに生きる自分達の存在に、感情を動かされたということである。

そして、そんな平沢唯たちを見て、私達も感情を動かされる。
愛しく思う。

なぜなら、私達もまた、そのような構造に生きており、また、そのような存在として生きていかざるを得ないからだ。


●●


拍手ありがとうございます!

>ブログばれwwwwwwwwww
それでも人生は続く、ということが非常に重要なことであろうかと思います(キリッ)

あなたもふわふわ時間が弾ける 唯梓のギター教室! 2010年08月17日 けいおん! トラックバック:0コメント:0

1493kon.jpg

これであなたもふわふわ時間のイントロが弾けるはず!
(でも、ある程度、音を歪ませないと似ないかもです)

散開!! 2010年08月07日 けいおん! トラックバック:0コメント:4

1490kon.jpg

普通に『けものがたり』と読んでましたが、
日常生活にはなんの支障もありませんでした。

DVDプレイヤーしかないけど、どうにかなるよね? 2010年08月03日 けいおん! トラックバック:0コメント:0

1487kon.jpg

正直、どうにもならなかった。
ちょっとBDプレイヤー買ってくる。



拍手ありがとうございますー!

>本当にどうするんですかねぇ、ひとりぼっちのあずにゃん。気が気でなりません。
あずにゃんはネガティブな方向に思い詰めていくタイプなので心配です。
「あずにゃん大丈夫。なんだかんだで、きっと、どうにかなるから」
と力強くも投げやりなメッセージをアンケートはがきに書いて送りたい所存であります。

>5Pでお願いします。
とりあえずは5人同時で交換日記する程度のところから徐々に慣らしていく感じで
お願い致したいという旨をアンケートはがきに書いて送りたい所存であります。


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