『2DADD』 2010年06月27日 日記 トラックバック:0コメント:0

「今、あなたが選択できることは2つしかありません。
 いいですか? たったの2つしかないのです。
 『今の状態のまま生きて、破滅するか』
  あるいは、
 『病気を治し、生きるか』です」

彼女はそう言った。
彼女の表情には照れも嘲笑も曖昧な含みもなかった。
彼女は本気でそう言っていた。
僕は思わず目をそらした。
僕は彼女のその真っ直ぐすぎる精神を直視できなかった。

「アルコール中毒、麻薬中毒、ネット中毒、いえ、
 中毒というより、依存なのかもしれませんが、
 それらについて、あなたは知識がありますか?」

「……多少はあるけど」
僕は小さい声で答えた。

「たとえば、アルコール中毒の場合ですが、
 これは『お酒好き』であることから全ては始まるようです。
 私はお酒が飲めないので実際はよくわかりませんが、好きな人は具合が悪くなるまで飲み続けるらしいですね。
 毎日、毎日、意識を失うまで飲んで、それこそベタな漫画のように、地面で寝たりする。
 そして、いつかはアルコール無しでは生きられなくなるわけです」

「……それはなんか極端な感じだなあ」

「極端ですか? どのあたりが?
 でも、最終的には同じですよね?
 肝臓がおかしくなり、飲まないと手が震えてしまうレベルの人も、
 毎日、欠かさずに、ほどほどに飲む人も。
 ほどほどだからいいです、ということはないのです。
 どちらもアルコール無しでは生きられないからです。
 前者の方は、それこそ、飲んでも飲まなくても異常ですし、
 後者の方だって、飲まないとなんか物足りなかったり寝れなかったりストレスが溜まったりするわけでしょう?
 中毒、あるいは依存という意味では同じです」

「……まあ、そういう意味なら」

「ですから、そういった意味で、あなたも異常なのです」

彼女はそう言い、にこり、と笑った。
ベタな表現だけれど、彼女のその笑顔は猫のように可愛らしい。
彼女は自分の人差し指を口元に近づけ、ぺろりと舐める。

「そして、私も同じく、異常なのです」

●●●●

新浜メディカル病院。

『メディカル』と『病院』が並ぶと『メカニカル機械』みたいな重複感があるが、それはどうやら英語を知らない素人の感想であるらしい。
僕は入院する前にちらりとのぞいたパンフレットの中で、その名前の由来を見たような気がするが、今は覚えていない。

僕はこの病院に入院している。
とはいっても、まだ入院初日であり、ベットに寝ているわけではない。
色々な検査を受けたり、面談をしたりしている状態だ。

僕の病名は『2DADD』である。
その病名の由来はよくわからないが、端的にいえば、
現実感覚を失ったような精神状態が継続する、
といったような症状を指す病気だそうだ。

僕は中学2年生の女の子である。

自分のことを自分で、女の子、と表現するのは少し気恥ずかしい。
ここは女である、と書いた方がよいのかもしれず、
しかしながら、でもやっぱり自分はまだ子供だよな、という謙虚さも必要ではあろうかとも思っている。

僕はこの文章をiPadで書いている。
iPadはタイピング音が鳴らないのと、wifiで快適にインターネットができるのとで、病院で使うにはぴったりである。
僕はとりあえず、日記代わりにこうやって文書を書いていくことで、長い入院生活の健忘録、あるいは退屈しのぎをしていくつもりだ。

●●●●●●

僕は彼女……[同室に入院している女の子で名前はルキア。たぶん嘘の名前]……に尋ねてみる。

「僕たちの病気は、インターネットでもでてこないけれど、いったいどんな病気なんだろう?」

「え? 出てきませんか?」

「うん」

僕はiPadを手渡す。
google検索で、ヒット数はゼロ。

「まあ、googleも大してあてにはならないけど。
 最近は検閲されてる言葉も多くなってきてるし」

「検閲? ……それはともかく、です。
 私たちの病気、本当に知りたいのですか?」

彼女はiPadを私に戻し、そのまま、なぜか僕の手を握る。

「え? うん、まあ知りたい」
「……じゃあ、教えてあげます。
 教えてあげますから、ひとつ、約束してください」

彼女の手はひんやりと冷たかった。
僕はなぜかどきまぎしてしまう。

「約束って、なに?」

「この病気は、お互いにお互いを支え合わないと治らないのです。
 ですから、お願いです。
 私を支えてください!」

彼女の最後の言葉は、妙に熱が入っていた。
僕は彼女の顔を見つめながら、無意識にこくこくと首を縦に振っていた。

●●●●●●

子供の頃から、テレビばかりを見ていた。
箸にもお弁当箱にもキャラクタの絵が入っていた。
漫画、ゲーム、テレビ、インターネット。

僕は息をするのと同じように、それらの情報を取り込み、自分の心に組み込んでいった。

ゲームと現実は違うんだよ。
もちろん。
そんなことは言われなくてもわかっている。
現実世界にピカテューはいない。

現実はゲームと違ってリセットできないんだよ。
もちろんもちろん。
わかってます。
ゲームはゲーム。漫画は漫画。
僕たちは2メートルもジャンプできないし、
2メートルのところから落ちたらケガをする。
ケガをしたら、もしかしたら一生治らない。

でも、そういう大人からの問いかけは、
僕の思っていたそういう表面的なところに対する
問いかけでは、本当はなかった。
もっと、深い、無意識下に対しての問いかけだった。

●●●●●●●●

「問題です。
 MMOの広告はどのように変化してきているでしょう?
 あ、MMOっていうの、わかりますか?」

「MMO? 大規模オンラインゲームのこと?」

「そうです。その広告、見たことありますよね?」

「あるよ。ブログを見てるといっぱい出てくる」

僕はiPadで適当なブログを検索する。
彼女は、それそれ、と目でコンタクトする。

「変化している?
 うーん。なんか、ちょっとずつ、えっちになってきてるかも」

「え、えっち? あ、そ、そう、そうです。正解。
 で、でも、えっちとかいう言い方、ちょっとよくないです。
 性的な情報を帯びてきているという言い方にしましょう」

彼女はなぜか顔を赤くしてしどろもどろになる。

「……どっちの言い方でも同じだと思うけど」

「同じですけど、表現として厳密なほうがいいのです!」

……本当にそれで厳密になっているのだろうか?
僕は疑問に思う。

「では次の問題です。
 なぜ、性的になってきているのでしょうか?」

彼女は指先をぴんと立て、天井に向ける。

「そっちのほうが、クリックしてくれる人が増えるから?」

「そうです。これはちょっと重要な情報だと思います。
 まず、ここからわかることは3つあります。
 (1)MMOは男性プレイヤーが多い。
 (2)どうせ遊ぶなら魅力的なキャラクタが多いゲームのほうがいい。
 (3)魅力的なキャラクタは性的な魅力が強い。
 ということです」

「うん。まあ、そうかも」

「で、MMOのパブリッシャーは同業他社の広告を見比べて、負けては大変と、より性的なキャラクタを作りだし、
 広告バナーに掲載します」

「うんうん。そういうスパイラル構造があるわけだね」

「さて、ではこれを見てください」

彼女は枕元の本棚から一つのファイルを取り出し、僕に手渡した。
彼女の本棚には同様のお手製ファイルがずらりとならんでいる。

「MMOの広告の移り変わりを各社比較した一覧表です」

なんだか手がこんでいる。
彼女の作った表には1995年から2010年までのMMO広告のスクリーンショットがびっしりと貼り付けられている。

「これを見ると、時代の流れがわかります。
 昔の広告と、今の広告、全然違いますよね?
 端的に言えば、リアル系が減り、アニメ系が増えました。
 そして、リアル系もまた、アニメ系とのハイブリッドといったようなデザインに移行しているのです」

へえ。
さすがに15年も経つと色々変わる物なんだなと感心する。
だんだんと絵が洗練されてきているような気もする。
最近の絵柄のほうが好みなのは、やっぱりこういう絵の流れに無意識的に誘導されているからだろうか。

「では、これを踏まえて、次はパチンコ業界の広告も見てみましょう」

彼女は僕の持っているファイルのタブをつかみ、ページをめくる。
パチンコ広告の各社比較、推移のページになる。

「どうですか? どう思いますか?」

どうって。
僕は表を見始めて、そして、すぐに答えがわかる。

「同じだ。MMOと同じ。アニメっぽくなってきている」

「そうです。正解です。
 この店外配置用の旗とか見てください。
 もう、何の店なのか、わからないくらいじゃありません?」

彼女が指さした旗には水着のアニメ美少女がばーんと描かれている。

「……そうだね。たしかに」

「と、いうのは、氷山の一角でしかないのです。
 もはや、私たちの世界は、こういう類の絵で包囲されているのです。
 そして、年年その包囲半径は小さくなっているのです」

「……あ、あの?」

彼女の言葉が熱っぽくなってきているのを感じ、
そして、ここに至るまでの文脈から、彼女の主張がだいたい見えてきたような気がした。

「ルキアちゃんは、こういう絵が嫌いなんだ?」
「好きです」

即答。あれ? そうなのか?
僕は訳がわからなくなり、混乱する。

「……ルキアちゃんは、いったい、何が言いたいの?」

「ルキにゃんと呼んでください。まるで、あずにゃんと呼ぶかのように」

「るきにゃん」

「ひ、ひらがな表記ですか? い、いいです。それ、すごくいいです」

「るきにゃんは、いったい、何が言いたいの?」

こほん。
と彼女はわざとらしく咳をする。

「私の病気が、それなんです。
 私たちは子供の頃から、こういう絵に慣れ親しんできました。
 それこそ、こういう絵なら、そこそこ違和感なく描けちゃうくらい、自然に身体に取り込んできたのです。
 それに加え、漫画は日本の重要な文化だ、とか、
 アニメーション技術は世界レベルだ、とか、
 そういう言説も登場しています。
 もちろん、色々な負の部分もあるわけですけど、それも含めて、自然に受容してきたわけです」

「まあ、そうかも」

「それはまるで、水道水にアルコールが混入されているのと同じようなものでした。
 そして、いつのまにか、気づかないうちに私たちはアルコール中毒になっていたのです」

「……」

「いやいや、そんなことはない、と言う人もいるかもしれません。
 水道水にアルコールが入っていても、それは消毒だし、酔っぱらってないからいいんだ、とか。
 でも、そんな人も、もはやアルコール無しでは水が飲めなくなっているはずです。
 ただの水では味気なくて、身体が満足しないのです」

「……うーん」

「問題は、水道局が各社競合しているところにあるかもしれません。
 他社に契約を取られぬよう、また、他社から取れるように、アルコール濃度を少しずつあげていく。
 アルコールの入ったおいしい水を供給する。
 それが、漫画でもアニメでもゲームでも同じことがいえるわけです」

「性的なキャラクタ、かわいいキャラクタはアルコールと同じってこと?」

「一つの側面では、そうです。
 もちろん、それだけが広告だと、売りだと、そう限定するわけではありません。
 しかしながら、そのような見え方、分類の仕方もあるということです。
 だから、私たちも、そういう意味でのアルコールに、中毒となり、あるいは、依存状態であるのです」

「……そうなのかな?」

「……まだあなたは私ほどには重症じゃないから自覚がないのかもしれませんね。
 では、次はこのファイルを開いてください」

彼女は僕に新しいファイルを差し出す。
ファイルを開くと、手書きの漫画が書いてある。
鉛筆の線が生々しい。彼女が描いたんだろうか?

「これは私が描いた漫画です」

やっぱり。

「最初の5ページは、わざと可愛くないキャラクタで描きました。
 漫画太郎の劣化コピーみたいな絵を目指しました」

確かに。
そして、漫画の内容も日常系であり、オチもヤマもない。

「で、次の5ページが私が本気で描いた漫画です。
 けいおん! っぽい絵にしてみました」

確かにけいおん! だ。
アニメ寄りに近い絵柄であり、可愛い。
漫画の内容はさっきの5ページと同じだ。

「さて、どっちの漫画が良かったですか?」

……。

「どっちも良かったけど、まあ、こっちのけいおん! のほうがいいかなあ」

「可愛いからですか?」

「そうだね」

「可愛いは正義ですか?」

「まあ、この場合は」

「それが、まさしく、刷り込みです。依存なのです」

……なかなか強引な性格だなあと思う。
でも、彼女の表情がものすごく活き活きキラキラしているから余計なことは言わないことにする。

●●●●●●

るきにゃんは、想像以上の変態さんであった。
入院2日目から、るきにゃんは本領を発揮した。

「下着を交換しましょう」

朝、るきにゃんは真面目な顔でそう言った。
僕はそれを聞いて、ああそうか、夜に汗をかいたりしたから、
朝は着替えなくちゃだめなのか、と思い、自分のベットの周りのカーテンを閉めて脱ぎ始めた。
そしたら、るきにゃんは閉めたカーテンを開け、きらきらした目で僕を凝視した。

「交換ですよ? その脱ぎたてを、私の下着と交換ですよ?」
「え?」

言ってる意味がわからず、僕は硬直した。

「さあ、脱いでください!」
「……あの。見られてると、恥ずかしいんだけど」
「大丈夫です。気にしないでください」
「……」

交換した。

●●●●

治療が開始した。

とはいっても、注射や点滴をするわけでも、当然、手術をするわけでもなかった。
ただ、まるで学校のように、時間割が配られ、それに沿って行動するというだけだ。

もちろん、良いことばかりではない。
僕のiPadはwifi機能をロックされてしまった。
それどころか、メモ帳機能以外をすべてロックされてしまった。
そして、携帯電話も没収。
病院にはラジオもテレビも新聞もないため、
外の世界の情報はひとつも入ってこないことになる。

るきにゃんのファイル群、本も全て片づけられた。
僕たち2人は、情報量が極端に減った世界で暮らすことになった。

なにはともあれ、インターネットができなくなるのが一番寂しい感じがした。
実はiPadにロックが掛かってから、まだ1時間も経っていない。
それでも、すでに、情報欠乏感を強く感じた。
特になんの記憶に残らないニュースであっても、いつもの僕はいつも欲していて、読んでいた。
それがなくなると、一気に静かになってしまう。
やることがなくなってしまう。
こうやって、文章を打つことすら、徒労に感じてしまう。

るきにゃんも手元にいつもあった本が全てなくなって、寂しそうだった。

「るきにゃん、退屈だね」

「そうですね。……実は、私、入院2回目なんです」

「え? そうなの?」

「私、見ての通り、可愛いキャラ依存症でしょう? 本当は、一回治って、退院したのですけれど、
 やっぱり、退院すると、だめなんですよね。しちゃうんです」

可愛いキャラ依存症。
るきにゃんはそういう病気なのか。
では、僕はいったい、どんな病気なのだろう?

「こうやって、情報が遮断されると、禁断症状がでてくるんです。
 前回のとき、私はそれを初めて体験しました。
 あれは、本当、大変な経験でした」

るきにゃんは遠くを見ながら言った。

「でも、つらかったですけど、得るものもありました。
 自分自身を深く顧みることができたというか」

「……でも、また、入院したんだ?」

「……入院というか、……まあ、私のことはいいです」

……どういうこと?

「それより、あなたは大丈夫ですか?」

「僕も大丈夫だよ。
 でも、今までずっとネット無しの生活はしたことがなかったから、ちょっと寂しいし、退屈かも」

「退屈なら、私とお話をしましょう」

「うん。でも、お話といっても……」

「では、あなたの大好きなインターネット。
 これは絶対に必要不可欠なものですか?」

「そんなことはないと思う。なくても死なないし」

「そうですね。
 水やごはんと違って、なくてもいいものです。
 でも、あると便利ですよね?」

「うん。検索もできるし、音楽も絵も映画も見れるし。
 スケジュール管理や株の取引なんかもしている人が
 いるみたいだし」

「そうです。インターネットは、今や、インターネットという言葉自体を日々拡張させ続けています。
 でも、こう考えてみたことはありますか?
 今、あなたが生きるために必要な情報量が10だとすると、インターネットの有り無しではどれだけ変わりますか?」

「うーん。無しでも10だよね。生きるためなら。
 で、あれば、100とか200とかになると思う」

「では、その90~190というものを得たくて、あなたは液晶に指をはわせるわけです」

「うん」

「その指をはわせる時間は、一日何時間ですか?」

「暇さえあればずっと」

「起きてる時間の半分くらいですか?」

「そうかも」

「とすれば、あなたが80年生きるとすれば、
その半分の40年は寝ているわけですが、
その残りの半分の20年間をあなたはインターネットに
費やしてしまうわけです」

……るきにゃんは強引だ。
でも、だいたいはそういうことなんだろう。
それは戦慄を覚えるほどの恐ろしい事実だ。

僕は80歳まで生きたとしても、半分は寝ている。
僕の活動できるのは40年間のみだ。
その半分の20年間を、iPadの上に指を這わすことに費やしてしまう。

「その20年間を私を愛でることに費やしてくれませんか!?」

……るきにゃんの言っていることはよくわからない。

「でも、るきにゃんの言うとおりかも。
 僕は時間を無駄に使い捨ててるのかもしれない」

「もちろん、そこから何かを得られればいいのですよ?
 私もMMOにどれだけ時間を費やしたかわかりませんが、
 そこから得たものはあったような気がします」

「何を得たの?」

「パソコンケース内の排熱技術とかですね。
 格好よく言えば、エアフローですか」

「MMOは関係ないんだね」

「それは言わないでください。
 でも、気づけばいいんです。
 何かに気づく。無駄に気づく。それが大事なのです」

るきにゃんは強引にまとめる。
でも、まあ、それでいいか、という気になる。

「話は変わりますが、ちょっと昔のアニメですが、
 エヴァってありましたよね。あの監督の庵野さんの
 コメントで、『エヴァというのは、独身男性の
 やるせなさみたいな物語』だった、というような
 ものがあったという記憶があります」

「そうなの?」

「エヴァというのは、色々な解釈ができる入り組んだ
 物語だったわけですけど、その要素要素をなんらかの
 現実的な事柄のメタファーとして捉えることが
 本来はできるのかもしれないなと思ったわけです」

「……」


「たとえば、個人的な悩みを別な要素に置き換えて、
 物語として形成するという手法は存在します。
 明治文学はそのような、自分の心を吐露するという
 ことを真面目に行うことが文学である、純文学である
 と言っているという見方もありあす。
 告白文学。実存文学。もちろん、そういう、文章に
 よって描かれた実存は、文章上のみでしか存在しえない存在なのかもしれませんが」

「……るきにゃんは語るねえ」

「私、そういうことをふまえて、思うんですよね。
 私たちは何かに対して中毒であり、依存している。
 これは確かに異常かもしれない。
 だから、それを捨てましょう、と。
 そしたら、その捨てたことを、メタファーにして、
 何らかの物語を作らねばならないと」

「……るきにゃん、一人舞台だね」

「私は捨てなければならない。そうですよね?
 さもなければ、私はこれからの20年間を、
 あなたのインターネットアディクトと同様、
 失ってしまう。それは避けたいのです。
 であれば、それに対して、語らねばならない」

「るきにゃん。見て、見て。僕、猫耳付けてみた」

「ね、猫耳!」

「猫耳だよ! るきにゃん!」

「に、にゃー! にゃーって言って!」

「にゃー」

「は、はわわわ」

馬鹿だ。
僕もるきにゃんも馬鹿だ。
でも、とりあえず、それはおいておく。

「……落ち着いた? るきにゃん」

「はぁはぁ。
 ちょっとしたトランス状態に陥っていました。
 というか、話の腰を折られただけという気もします」

「るきにゃん。ちゃんと会話をしよう」

「はい。すいませんでした」

「ここまでの話をまとめよう。
 (1)可愛いもの依存症を治したい。
 (2)可愛いものを断つ生活をする。
 (3)その禁断症状に勝ちたい。
 (4)そのためには、その経過を語らねばならない。
   (語りによって状況を非可逆的にするため)
 (5)終わり
 ということでいいのかな?」

「可愛いもの依存症……という言い方はオブラートに包み過ぎだと思います。
 2次元依存症の方がストレートでいいです」

「……そう言うと、心が傷つくかなと思って」

「いいです。私の心なんて傷ついたほうがいいんです。
 『ただの脱ヲタなんでしょ?』くらい言ってもらってもかまいません」

「それ言うと、僕自身にもブーメランが刺さるから」

「刺さってこそのブーメランじゃありませんか?」

「その一文は正しいけど、全体としてはひどいこと言ってるよね?」

●●●●●●

サキュバス。
それは男性を魅了する性の悪魔。

僕は物語でサキュバスを知った。
僕はサキュバスが怖い。
なんというか、そのような悪魔を産んだ男性の想像力が怖い。
想像力といっても、ポジティブなものではない。

暗闇を歩いていて、後ろから足音が聞こえるから、
足だけの妖怪がいるに違いない、そう思いこむ類の
自然発生的な想像力だ。

逆から考える。
男性がサキュバスを作り出した。
であれば、サキュバスは男性のコピーでもある。
サキュバスは男性が作り出した男性自身の心の闇だ。

僕はサキュバス化した男性を多く見た。
サキュバスとなって、漫画として男性を魅了するような類のサキュバスだ。

おそらく、男性は考えたに違いない。

サキュバスは怖い。食われたくない。でも魅了された。
だから、サキュバスに、自分がなろう。
サキュバスとなって、みんなを魅了したい。
そう、俺はサキュバスになりたい。

僕が怖いのは、そういうサキュバスのことかもしれない。
今の時代、男性から吸い上げるのは金だ。

金。
マネー。

そうしてペンをもったサキュバスを集め、首輪をつけ、鵜飼いのごとく支配するパブリッシャー。

地面に根を伸ばし、金を吸い上げ、花を咲かせる。
その花に魅了された虫たちが種を遠くに運搬する。

産めよ、殖やせよ、地に満ちよ。

それは見方によっては華やかで美しい。
彩度高く、咲き乱れる花たち。
花は性器である。これはメタファーではない。
だから、すなわち、それは、自然だ、ということなのだ。

それは自然であり、普通のことなのだ。

普通のことが怖い、そんな僕が間違えている。

●●●●●●

「世界は既にあるのです。
 私たちはそれに気づかないだけなのです。
 問題など、たったの一つもないのです。
 渡り鳥がまっすぐに目的地へと飛ぶのと同様、
 私たちは生まれながらにして答えを持っているのです」

座禅。
るきにゃんと私は背中合わせに座って座禅をする。
といっても、姿勢が崩れていても肩を叩く人はいない。
ただ、暇だから座禅ごっこをしているだけなのである。

「……るきにゃん、今、なんか言った?」

「これはどこかの禅師のセリフです。
 私たちは普段、理屈を考えるでしょう?
 これがこうだから、こうなんだ、とか。
 猫耳がかわいいのは猫が可愛いから、とか。
 でも、そういうのは、違うと言っているのです。
 そういうのは、人間が勝手に考えているだけ。
 世界は、人間が観察して定義しなくても、
 あるがままに存在しているのです。
 美しい花というものはある。
 花の美しさというものは無い。
 これは小林秀雄ですね」

「……どういうことなんだろう?」

「花は美しいんです。でも、これこれこうだから
 美しいという理屈は無いんです。それを書くと
 嘘になるということです。
 たとえば、花は赤いから美しいんだ、と断言するのは
 おかしいわけです。
 その人が赤い花しか見てないだけで、世の中には
 美しい青い花も存在しますよね?」

「なるほど」

「思考停止。というより、自分の狭い了見を自覚して、
 常に謙虚でなくてはならないということですね。
 それが座禅を通して知る一つの経験なのかもしれません」

僕たちの時間は静かに過ぎていく。
インターネットもテレビもラジオも新聞も広告も全然、たったの一つも、1bitも存在しない静かな世界。

それは、まるで大昔へと逆行したような、変な世界。
でも、現在が変なのか、大昔が変なのか、誰が判断できるだろうか?

ある意味、隔離された世界。
牢獄のような世界。

でも、大量の情報がスモッグのように立ちこめる世界、
目の前が情報で霞んで見える世界もまた、ある意味、
隔離された世界に違いない。
牢獄のような世界に違いない。

僕たちは、喧噪よりも、静かな世界を望む。
嘘だらけの統計の数字よりも、自分の感覚を信じたい。
なによりも、座禅の言葉ではないけれど、
世界にとっての正解は今すでにあるがままにある。

極端かもしれないけれど、僕たちは静かに静かに生きていければ、その他には何もいらない。

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けいおん! のことばかり考えている。 2010年06月21日 けいおん! トラックバック:0コメント:0

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けいおん! について、どう考えるべきか。

漫画原作だけ、アニメ版だけ、音楽だけ、2chを含むネット言論だけ、
京都アニメーションだけ、芳文社だけ、ポニーキャニオンだけ、
描線だけ、キャラクタだけ、独特な髪の毛の影だけ、

そのように思考範囲を限定して考えるのも一つの手段ではあるが、
今ひとつダイナミクスに欠けるきらいがある。

そこで、googleMapのレンジを一気に上空に引き上げるかのごとく、
超遠景からけいおん! を見ると、そこに物凄い精緻な絵が描かれていることに気付く。

その絵がどのようなものか、時間の許す限りここに書いていきたい。



(顧客満足度ゼロの嫌なブログを目指す)




拍手ありがとうございますー!

拍手返信『いつもより早く起きても』>そうなんですよね。
「時間有効利用法」みたいな本を読むと、そういう時間こそ良い仕事ができる、
とか書いてあるんですけど、霧雨魔理沙を操作するという程度の良い仕事を
しているわけなので、何の問題もないのです(キリッ
むしろ、何の問題もないぜ、みたいな感じです。
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早起きし過ぎても損することは無い。 2010年06月20日 漫画 トラックバック:0コメント:0

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今日は4時に目が覚めたので、2度寝をしないで東方妖々夢を頑張った。
(もっと有意義な時間の使い方があるのではないかという大きな課題を残した格好だ)



拍手ありがとうございますー!
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遠心力は質量に比例することをメイドさんは経験則で知っている。 2010年06月18日 漫画 トラックバック:0コメント:0

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遠心力は物体が回転運動する際に発生し、
質量と角速度と回転半径が大きくなればなるほど強く回転法線方向へ物体を動かそうとする。

ということで、ユグのような条件下においても、
『ゆっくり動く』『ちまちま動く』
を実践すれば、さほど強くは遠心力が働かないのである。

なお、速度の増加に限っては、遠心力が指数関数的に増加するので注意が必要である。
(ものすごく何の役にも立たない知識を押し売りする嫌なブログを目指す)




拍手ありがとうございますー!

拍手返信『二期の自然な感じが』>よさこい!
私も2期のテンポが好きですね。あまりオチてなくても何のフォローもせずに
話題を変えるあずにゃんとかムギとかたまりません。
やっぱり、直接的に描かないえろというものが大事なのではないかと思わざるを得ません。
……そう。
時代は着衣えろです(キリッ
pixivのタグは一応、『けいおん!!』にしましたが、あとあと考えたら『!』の数が2期仕様だったので
非常に見つけにくい絵となっているようですw

拍手返信『律ちゃんは俺の』>私も律ちゃん中毒なので、1期11話の再生数が非常に多いです。
「えー!? 寝るまで側にいてよー お願い、澪~」とか、本当、いいですよね。
律ちゃんは澪にいつも側にいてほしいんですよね。澪が側にいるからこそ律ちゃんは元気になるわけです。
「澪の足音、わかるよ」 とか、もう、律ちゃん、私、どうしたらいいのか……
(特にどうもしない)
とりあえず、服は着てくださいw

拍手返信『カラー漫画』>おかえりなさい!
5回連続けいおんネタで更新したせいで、けいおんだらけに見えますが、
実際問題、私の頭の中は基本的にはけいおんネタばかりです。
「みーおー! バイトしようぜバイトっ」 律ちゃんの声が基本リピートです。
(けいおん病末期)





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おくらいり! 2010年06月10日 けいおん! トラックバック:0コメント:0

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うーん。
なかなか難しい。

今日はとりあえずここまでで寝るのだった。



拍手ありがとうございますー!
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けいおん! に首ったけ!! 2010年06月09日 けいおん! トラックバック:0コメント:0

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ここまで進めて今日は寝る。




正直、なんでこんなに自分がけいおん!にはまってるのか、全然わからないのです。

もっともらしい理屈はいくつでも言えますし、
勿論googleで検索しても出てきますが、
でも、「それはけいおん! じゃないとダメなのか?」
と言われると、回答が非常に難しい。

ゆゆ式、じゃダメなんですか?
ひだまりスケッチ、じゃダメなんですか?
GA、じゃダメなんですか?
うさかめコンボじゃ、ダメなんですか?
まーぶるインスパイア、じゃダメなんですか?

全然、ダメじゃないのです。

……さあ、どうする自分。
(全然どうもしないブログランキングに以下略する)



拍手ありがとうございますー!
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他人の過労を心配してたら自分が過労に追い詰められたでござるの巻 2010年06月07日 けいおん! トラックバック:0コメント:0

1472kon0.jpg

下書き線を消してる余裕すら無いので、スキャンしたままで寝るのだった。



拍手ありがとうございます!

拍手返信『妄想だけじゃなくて』>
……あ。
いえ。
その。
……実際、勢いで投稿してみましたが、
次の瞬間にはpixivをブックマークから削除しました。
あずにゃんペロペロ(^ω^)

拍手返信『気になって夜しか眠れない』>
長期的な戦略でもって、けいおん!と付き合っていきたいと思うので、
とりあえず、朝も存分に寝て欲しいと思います。
寝ちゃいけない朝に寝るという背徳感に溺れてこその人生ではないでしょうか。
メイドさんの魅惑のひだひだの快楽に溺れてこその人生ではないでしょうか。
(意味もなく言い換える)


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簡易的な色塗り実験 2010年06月05日 けいおん! トラックバック:0コメント:0

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境界線を使ってバケツツールで色塗りする実験。

エンピツ線だと結局は線の付近を塗りなおさなきゃならないけれど、
慣れればもっと上手く早く塗れそうな気がします。

とりあえず、これをpixivに貼って、
まさかのpixivデビューをするという妄想をする。
(ネット内でもひきこもり体質)
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唯梓! 2010年06月04日 けいおん! トラックバック:0コメント:0

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もうだめだ。
けいおん! が好き過ぎて生きるのが辛い。
放送が終わったら、残りの人生どうしたらいいのかわからない。

とりあえずは自分なりのけいおん物語を描く以外にやるべきことが見当たらない。




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