小説『アウトレイジ へうげもの』 2015年05月02日 日記 トラックバック:0コメント:0

気付けばヤクザになっていた。

喧嘩が強いわけでもない、不良だったわけでもない、ヤクザに憧れてたわけでもない。
ただ、勉強ができず、学校に馴染めなかったのだ。
学校に行かず、ゲーセンに通い、小銭欲しさに悪行に手を染めた。

初めは些細な悪事だった。子供のイタズラのような些細な盗み。
いつしかちょっとした犯罪レベルになっていき、そのあたりでチンピラに目をつけられた。
悪党から見れば小悪党は赤ん坊のようなものだ。
実際、当時俺はまだ15歳で子供そのものだった。
そして、そんな悪党に弱みを握られて脅され、手を汚し、少しずつ本物のヤクザになっていった。

⚫︎中略⚫︎

ヤクザは戦国武将のようなものだ。
この21世紀でも、appleWatchが店頭に並んでいるこんな御時世でも、時代錯誤の
戦国武将をやらかしている。組織の頂点には織田信長がおり、家臣がおり、家来がいる。
ヤクザの組織に入ったら最後、無事に抜け出ることはできない。
スジを通す、とは『首を差し出す』ということで、文字通り、死を意味することだってある。

⚫︎中略⚫︎

小林組と織田組との抗争。
それは血で血を洗うような非道い有様で、まるで北野映画のようだと俺は思った。

ーーすみません、私、下の階の部屋に住んでるものなんですけど。

と俺はインターホンに向かって言う。

ガチャ、と鍵が開き、岩のような顔をした如何にもヤクザという男が顔を見せる。

ーー5月度の防犯費を頂きにきたんですけど。

ヤクザの顔が歪み、バカやろう、帰れ、と低く凄んでくる。
ヤクザの黒いスーツから硝煙の匂いがする。

「なんだ? 誰だ?」

部屋の奥から声がした。小林組、若頭の遠藤だ。ビンゴ。
俺は岩のような顔のヤクザの股間と心臓に鉛玉を撃ち込んで、そのままドアチェーンを撃ち抜く。
サイレンサーは緩衝材のプチプチマットを踏みつぶしたような発砲音しかさせない。
後ろ手にドアを閉めて岩のようなヤクザを玄関脇に押しのける。

小林組若頭遠藤の隠れ家はまるで貧乏学生のアパートだ。
よく考えられている。まさかこんなところにこんな大物が隠れているとは誰も思うまい。

真っ赤な顔をした遠藤のピストルを遠藤の指ごと撃ち抜いて、部屋の対角にいた遠藤の女を
ヘッドショットする。白い壁紙が真っ赤に染まった。
一瞬で異形化した右腕に驚いている遠藤を床に組み伏してナイロンバンドで腕と脚を拘束する。

何事もスピード感が重要だ。遠藤の額にピストルの先端を突きつける。

ーー小林はどこにいる? 5秒以内に言え。

「広島。広島だ。殺すな。やめろ!」

遠藤の女が床に崩れ落ちた音がする。いい女も死ねば自然現象そのものだ。

「やめろ! なんでもする! 頼む!」

ふと、遠藤の後ろに目をやる。
遠藤の部屋は大きなベッドと大きなテレビと小さなテレビがあった。

小さなテレビは裸のブラウン管で、なぜか縦置きになっていた。
ブラウン管から伸びるコードは剥き出しの大判の基板に繋がっており、
その基板から伸びるコードはコントロールボックスに繋がっている。
コントロールボックスにはレバーがついており、3つのボタンが付いていた。

ーー遠藤。なんだ、あれは。

「な、なんのことだ? え、あ、あれか? あれはアーケード基板だ」

ーーなんの?

「怒首領蜂」

まじっすか。
俺は遠藤を蹴飛ばして、基板を見にいく。本物、初めて見たわ。

わりと整然とならんでいる大小それぞれのIC。
そして基板のど真ん中にATLUSって白抜きで書いてある。

ーーそうか。怒首領蜂はまだATLUSが販売だったのか。

基板をしげしげと眺める。
美しい。いや、これはこの基板に込められたデータと処理系を含んで感じる美しさだ。
怒首領蜂は美しい。年を取り、ますますそう感じられるようになった。
俺の青春時代は怒首領蜂と共にあったのだ。そういう偏向はもちろんあるかもしれないが、
怒首領蜂の凄さというのは俺はすごく特筆すべきレベルだと思う。

怒首領蜂の凄さをどう語るか、これは本当に難しい。
なぜならば前後の文脈が重要だからだ。ゲームの歴史の流れの中でこの名作が生まれた奇跡、
イノベーション、輝きがあり、それを抜きにしては魅力が語りきれないからだ。
ゲーム単品においても、もちろん素晴らしい点が多い。もちろん。
だけれど、例えば、『ゼビウス 3D/G』というゲームがあり、これは往年の伝説のゲームの
ゼビウスを正統進化させ、かつ、3D化させようとした力作である。音楽も非常にいいと思う。
だけれど、なかなか評価が難しいゲームである。ポリゴンという技術により3Dを表現する
足がかりで出来てきて、ナムコとしてもリッジレーサー、鉄拳などで自社基板を作っており、
先鋭的な表現、ゲーム体験の最先端に走ろうとしていたその最中、なんとかゼビウスを、という
社内の流れだったに違いないのだ。

1991年 ソルバルウ(基板:SYSTEM21)
1991年 スターブレード(基板:SYSTEM21)
1993年 リッジレーサー(基板:SYSTEM21)
1994年 鉄拳(基板:SYSTEM11)
1995年 鉄拳2(基板:SYSTEM11)
1996年 ソウルエッジ(基板:SYSTEM11)
1996年 ゼビウス3D/G (基板:SYSTEM11)

なんでSYSTEM21から11にスペックダウンしてるのか、というのが素直な印象なのだが、
そこには1994年に発売されるplayStationとの関連がある。当時のアーケードゲームは
スペック的に家庭用とかけ離れていた。化け物のようなスペックだった。
しかし、任天堂、セガという流れとは別に、あのソニーがゲーム業界に参入するという
大事件があり、それが1994年の話だったのだ。今から11年も昔の話。早いものですね。
playStationのスペックに合わせた基板がSYSTEM11だった。
アーケードゲームをスムーズに移植することがナムコは何よりも重要だと考えた。
今なら、iphoneに移植することを前提にゲームを作るような、そういう感じ。

でも、でもねえ、ゼビウス3D/Gは、どうだったのか。
音楽はいい感じだし、プレイしている感じは、正統進化だけれども、みたいな。
ポリゴンとスプライトのその差は、デジタル作画とアナログ作画の違いみたいな、
ちょっとした、あの、なんとも、表現しがたい、あの違和感、みたいな感じを思わせる。

チープな、というとちょっと角が立つけれど、なんか、如何ともしがたい、みたいな!

みたいな!

まあ、それはともかくである。
我らが怒首領蜂の話に戻る。

1997年 怒首領蜂 (CAVE自社基板)

この、CAVE自社基板っていう、カッコよさ。
ちなみにCAVEの設立は1994年。
1995年に首領蜂をリリースしている。
ついでなのでCAVEの歴史を抜粋してみよう。

1994年 CAVE設立。
1995年 首領蜂
1997年 怒首領蜂、峠MAX 最速ドリフトマスター
1998年 エスプレイド、弾銃フィーバロン
1999年 ぐわんげ
2001年 プロギアの嵐
2002年 怒首領蜂大往生
2003年 ケツイ、エスプガルーダ
2004年 虫姫さま
2005年 鋳薔薇
2006年 虫姫さま ふたり
2007年 むちむちポーク、デススマイルズ
2008年 怒首領蜂大復活
2009年 デススマイルズ2
2015年 ゴシックは魔法乙女

怒涛だわ。怒涛。とにかく、池田恒基さんが仕事しまくった感がある。
でも、改めてこうしてみてみると、別ラインの動きがあったんだなと思いますね。
基本として、池田さんは一年に一つの新製品、今の時代的には新規IPを作ろうとしていた
んだと思われます。でも、1998年のエスプレイドと弾銃フィーバロンは別ラインだったのかな
と思いますね。どちらのゲームも池田さんっぽい作りなのですけど。どうなんだろうか。

池田恒基さんを中心に追ってみますと、CAVE入社前は東亜プランだったというのは
有名なところであります。

池田恒基さん

1992年 東亜プランに入社
1993年 V・Ⅴ
1993年 BATSUGUN
東亜プラン倒産。以降、CAVEに移籍。

ちょっと待ってちょっと待って、って感じじゃないないですかこれ。
入社していきなりV・Vのプログラミングですよ。
ちなみにwikiでは池田恒基さんは1968年生まれということで、
24歳で東亜プラン入社、ですよ。25歳でV・V。27歳で怒首領蜂ですよ!

これ、ちょっと、これ、ちょっと、今更ですけど、これ、大文字で書いても
いいんじゃないですか?

27歳で怒首領蜂を作った。

はい。そういう文脈もまた必要なんじゃないかと。そして、その1年前位に
ゼビウス3D/Gが出てるという時代の空気ですよ。

ちなみに、

1993年 ガンスターヒーローズ
1996年 バトルガレッガ
1996年 スーパーマリオ64
1996年 レイストーム
1997年 怒首領蜂
1997年 Gダライアス
1998年 レイディアントシルバーガン
1998年 ゼルダの伝説 時のオカリナ

という他社動向も加味する必要はあると思います。
NINTENDO64が出て、レイストームが演出系STGを極めた中で、怒首領蜂か、という逆風。
それも加味しなければならないかと。
また、あの、当時、驚くべきグラフィック・ゲーム性のバトルガレッガの存在。
緻密、としか言いようがない。緻密すぎて、破綻してるみたいな! みたいな!
あっ、これ、みたいな!っていうの、西尾維新のネタのパクリかも、みたいな!

ちなみに、

1983年 ファミコン
1987年 PCエンジン
1988年 メガドライブ
1990年 スーパーファミコン
1993年 3DO(松下電器)
1994年 セガサターン
1994年 プレイステーション
1994年 PC-FX
1996年 NINTENDO64
1998年 ドリームキャスト
2000年 プレイステーション2
2001年 xbox
2001年 ゲームキューブ
2004年 ニンテンドーDS
2005年 xbox360
2006年 wii
2006年 プレイステーション3
2011年 ニンテンドー3DS
2012年 wiiU
2013年 プレイステーション4
2014年 xbox one

という背景の知識がある更に面白い。
1997年の怒首領蜂って、マリオ64とかドリームキャストと戦ってたんだ、みたいな。

1991年 ストリートファイター2
1993年 バーチャファイター
1994年 バーチャファイター2

世の中、格闘ゲームだらけ、みたいな世界でドロップされた怒首領蜂。
で、これがものすごく、いいんですよ、
CAVE自社開発の基板のキビキビした動き。処理落ち。いいんですよね。これ。
怒首領蜂、いいんですよ。もう、もう、本当、語り尽くせないくらい。

「……お前、興味あるんだな。やる。やるよ、その基板、コントロールボックス、やるよ。
 やるから、俺を殺すな。もう足を洗う。明日、日本を出るつもりだ」

ーーなん、だと?

「持っていけ。そのまま、そのままそいつを持っていけ。俺を逃せば、譲ってやる」

遠藤はそう言い、嬉しいような、悲しいような、怒っているような、
そんな表情を俺に見せた。

⚫︎

拍手ありがとうございました!
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